目は口ほどに物を言う、と申しますが、目の症状は体の症状の一部である事がたくさんあります。
疲れがたまって物が見づらかったり、目を使っていると肩や首がこったり、風邪を引くと目が赤くなる、こんな経験は誰しもが持っているかと思います。
そういったとき、一度や二度であれば西洋薬で治療すると症状を抑える事ができます。その間に人間の自然治癒力が体を治してくれる訳です。
しかし、何度も繰り返すときはどうでしょう。例えばものもらいを繰り返すときなどは、体質の改善を行う事によって何度も繰り返さないようにする事ができます。生活習慣の改善なども良い方法ですが、より積極的に漢方薬を併用する事によって体質を改善してみませんか?
体の不調を治す事に主眼を置く漢方治療では、目の治療にあわせて、体のほかの部分にも思わぬ効果を得られるかもしれません。
漢方薬の多くは病の原因となっている体の不調を治す事を目的としています。体質を改善する事を目指す訳ですから、最終的にお薬が必要なくなるまでにしばらく飲み続ける事が必要になるかもしれません。
しかし、効果が出るまでには時間がかからない場合もあります。なかには、数分で効くほど即効性がある漢方も存在します。例えば、足が吊ったときに飲む「芍薬甘草湯」は、湯に溶かして口の中に含むようにしてゆっくりと飲むと、舌下動脈から吸収され数分のうちに足の筋肉に発生した激しい痛みを取り除いてくれます。
近年薬局では、処方指導の一環としてお薬の主な用途と、一般的な症状を記載した用紙をお渡ししていることが多いと思いますが、記載されている内容はあくまでも一例で、健康保険上の一般的な内容に限られています。
漢方治療では西洋薬と違い〇〇病に効く薬、というものは存在しません。〇〇病を起こす体の状態、というものがあって、その状態を健康な状態に近づけるための漢方薬というものが存在するだけです。
漢方は古代中国で発祥し、江戸時代に日本独自の進化を遂げました。多くの薬は西暦200年前後に張仲景によって記された傷寒論や、金匱要略に記載されているものそのままです。例えばツムラの漢方薬中には傷寒論に記載されている漢方薬がほぼ当時のままなんと63種類も含まれています。改良を得意とする日本人ですから、効かない薬であれば江戸時代の間にとうに無くなるか、改良されている事でしょう。
悲しい事に日本は明治期西洋化を急ぐあまり、それまで培ってきた医学をすべて封印するという愚挙をおかしました。しかし、民間の有志や、一部の研究者の努力によって細々と生き続け、最近再び脚光を浴びるようになっています。
私は医師になってから十数年の間自分や家族に細々と漢方薬の処方を続け、ここ4~5年ほどは一部の患者さんを治療するときに漢方薬を併用してきました。
昨今、漢方治療が注目されるようになり、要望も多く、通院中の方からの多くの希望もあり、このたび正式に漢方外来として始める事とさせていただきます。